コロナ禍で、エレベータースイッチに触らず近づけるだけのスイッチが登場したが、原理は静電気の応用である。塗装では「静電塗装」として工業塗装では中心の技術として知られるが、当方、入社したときは、大学の工学部出身で有りながら「静電塗装」は聞いたこともなかった。仕事で塗装ラインを設計する時点で、静電塗装機、粉体静電塗装装置などを導入したが、本格的に勉強したのは、静電塗装での火災や粉塵爆発など事故が起きた時だった。
ウィキペディア (Wikipedia) には「静電気 (せいでんき、英語: static electricity) とは、静止した電荷によって引き起こされる物理現象」とある。
電荷とは「電荷 (でんか、英語: electric charge) は、粒子や物体が帯びている電気の量」とある。
電気とは「電気 (でんき、英語: electricity) は、電荷の移動や相互作用によって発生するさまざまな物理現象の総称である。静電気も含まれる」とある
何故、静電気というのか? 英語ではstatic electricityで、静かな電気の意味だ。電気とは電子の流れにより生じると習った。電子とは原子の外側を回っていてマイナスの電荷を持つ。
しかし、静電気の発生と状態は解明されており、下図のように電子と陽子の状態が電子の移動で不安定な状態を「静電気が帯電」と表現する。通常の陽子と電子が一定の状態を中性として、電子が多い場合は-、陽子が多い場合は+と表示される。
帯電量は次式のように物体の静電容量と電位により示される。
静電気の発生は「電子の移動」とも言え、原子から構成される物質、つまり、この世のあらゆる物体は静電気を発生する可能性を持つ。帯電量は静電容量で表示され、蓄電量を示し、各種測定原理として使われる。
これはまさしく静電塗装そのもので、塗料の微粒子に静電気を与え、金属板の表面に集合させて塗膜を形成している。
小学校で習う樹脂製の下敷きを擦って髪の毛を立たせる実験のように、異種物体の表面の摩擦による。
(2) と逆に、付着しているものを無理やり剥がすと時に起こり、テープやシートなどを剥がす時に起こる
二物体の帯電量の差が在るときに、接触する時に起こり、工場で指先でスイッチなど触ろうとする時にパチッとすることがある
アースは地球の語源で溜まった静電気を地球 (中性物質の固まり) に逃がすことを意味し、電気を使用する機器、場所などでは、「アースを取る」ことが安全面で義務付けられている。地球は通常発生する静電気量に比べ無限大の容量を持っており、+、-を問わず吸収する能力を有する。過去数百年で、炭鉱、工場などでの死亡事故の最大の原因は静電気に起因する。
火災:
(1) ハンガーに吊られた被塗物が揺れて静電塗装機に接触し、その火花でブース全体に火炎が拡がる
(2) ハンガーと被塗物の接点が絶縁状態で塗装され、帯電量が増えた後で、その接点が通電して火花から火災に
(3) エプロンをした塗装作業者がエプロンをしたまま (静電気が帯電した状態) で、塗装ブースのドアに触れた瞬間に炎が全身に走り火傷
粉体塗装での粉塵爆発:
(1) 集塵装置 (バッグフィルター) が爆発 (アースが不十分な構造のため)
(2) 塗装ブースで被塗物が落下し、その火花が集塵装置に吸引され爆発
塗装ラインの最大の課題はゴミブツ問題であるが、その最大要因として静電気が上げられる。要因として被塗物のアースが不十分な場合、ゴミブツ物質が静電気を持つ場合の二通りがあり、各ラインで両者の極小化が塗装不良の低減化のかぎとなる。特に樹脂など静電気を帯電し易い被塗物の場合は除電装置などが活用される。
ゴミは大別すると乾燥炉、コンベアなどからの無機物系の黒ゴミと塗装ブース、乾燥炉に浮遊する有機物系の白ゴミとに分かれるが、後者の付着には静電気の影響が大きく、逆に静電気対策すれば防げる。
塗装:静電塗装機、粉体塗装機、除電装置、静電容量式測定器
塗装以外:静電植毛、コピー、印刷、電気集塵機、イオンエンジン、各種測定器