塗料・塗装の全体がCO2とどう関わっているかを示す指標としてライフサイクルアセスメント (LCA) が使われる。
日本の場合を例に取り示す。 (塗料製造200万トン/年) として、200万トンの原料の行方を示す。
単位: トンCO2/年
但し、運搬のCO2排出量は含まず。
塗料メーカーが購入する原材料は、石油、石炭などに由来したCO2を排出するかと原材料メーカーが製造に係りどれだけCO2を排出したか、との2点がある。
原料単体としてのCO2排出量は産業連関表にて調べる。
など多岐に亘るため、購入時にメーカーにCO2換算量を提出させることになる。
光合成 (炭酸同化作用) により空気中のCO2から生成される植物を原料にすればCO2の循環だけになる。既に燃料としてはバイオマス燃料が実用化されているが、今後は、樹脂や溶剤の生成が期待される。石炭、石油からの樹脂製造の努力に比べれば、容易に製造技術も可能であろう。
塗料の原料によるCO2発生量には大差があるが、これまでVOC含有量での評価はあったがCO2発生量による評価は無かった。例えば塗膜の乾燥を例に取ると、常乾塗料と焼付塗料では乾燥によるCO2発生は後者が数百倍のCO2を発生する。これまで、生産性に重点が置かれた塗料評価が見直されることになる。この際、特定化学物質、有害ガスなどに指定されている原材料も同時に見直しが図られることを期待する。
樹脂の硬化には、酸化重合 (自然乾燥) 触媒硬化、UV硬化、熱硬化 (高温乾燥炉) などがあり、工業塗装の硬化は乾燥炉での熱硬化であり、最も多くCO2を排出する。例えばUV塗装であれば数秒で硬化し電気によるCO2排出量も熱風式に比すと1/10程度に下がる。総合的に見て塗料樹脂の改良がCO2削減には最大の効果を発揮する。
塗装工場 (工程) では大量のエネルギーを使用するためCO2も大量に排出するが、殆どの塗装ラインではその排出量が把握されていない。ここでは、標準的なコンベアラインを想定しCO2の排出量の算出方法を示す。
このラインで使用するエネルギーと産業廃棄物を経産省の資料によりCO2換算して各工程別に記入した。
これを一覧表にすると下記になる。
この塗装ラインからのCO2排出量は毎月100トンとなり、年間1200トンとなる。
これは、日本の2017年度年間CO2排出量11.9億トンの産業界24.9%の何%に当たるか。
産業界2.96億トンに対して、1200トンは0.0004%となる。
この程度の塗装ラインが1万ラインあるとすると工業塗装は産業界の4%を占めることになる。
(参考例: 自動車塗装ラインは年間4万トンの排出量と言われる。)
この数値には塗料原材料関係は入ってないので、塗装工場とすると更に大きな割合になる。